糖尿病教室|練馬区石神井町の医療法人 社団弘健会 菅原医院

糖尿病教室

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糖尿病の食事療法

エネルギー摂取量は、性、年齢、肥満度、身体活動量、病態などを考慮し、決定します。
ただし、現体重と目標体重に乖離がある場合は、柔軟に対処します。

エネルギー摂取量=目標体重×エネルギー係数

エネルギーバランスは体重の変化にあらわれます。
治療開始後の代謝状態を評価しながら、適正体重の個別化を図ります。
その後、体重の増減、血糖コントロールを勘案して設定を見直します。

目標体重(kg)の目安

総死亡が最も低いBMI は年齢によって異なり、一定の幅があることを考慮し、以下の式から算出します。

65歳未満:
〔身長(m)〕²×22
前期高齢者(65~74歳):
〔身長(m)〕²×22~25
後期高齢者(75歳以上):
〔身長(m)〕²×22~25

75歳以上の後期高齢者では現体重に基づき、フレイル、※1(基本的)ADL※2低下併発症、体組成、身長の短縮、摂取状況や代謝状態の評価を踏まえ、適宜判断します。

  • フレイル:要介護と健常の中間にあり、筋力低下、活動量の低下、歩行速度の低下、易疲労、体重減少などが診断の基準となる。
  • (基本的)ADL:人が日常生活を送るために行う活動の能力のこと。(更衣、入浴、トイレの使用、移動などを基本的ADLという)

エネルギー係数の目安

軽い労作(大部分が座位の静的活動)
25~30kcal/kg 目標体重
普通の労作(座位中心だが通勤・家事・軽い運動を含む)
30~35kcal/kg 目標体重
重い労作(力仕事、活発な運動習慣がある)
35~kcal/kg 目標体重

高齢者のフレイル予防では、身体活動レベルより大きい係数を設定できます。
また、肥満で減量を図る場合には、身体活動レベルより小さい係数を設定できます。 いすれにおいても、目標体重と現体重との間に大きな乖離がある場合は、上記の目安を参考に柔軟に係数を設定します。

糖尿病の食事療法は一言で言えば、ビタミン、ミネラル、鉄、蛋白質、カルシウム等を不足させずに、摂取カロリーを減らすと言うことになります。いろいろなダイエットの本がありますが、皆、何かが不足しています。

カルシウムが減れば骨粗鬆症になりますし、鉄が不足すれば貧血になります。蛋白質が減れば、筋肉をはじめとする体組成が減少します。基礎代謝(なにもしなくても消費されるエネルギーのこと。呼吸をしたり,心臓が動いたり、たえずエネルギーは消費されています。)の40%は筋肉により消費されます。したがって筋肉が減ると太りやすい体質になってしまうのです。

最も優れた減量メニューが糖尿病食ということになります。

食事療法の基本は、

  • 牛乳は一日1本飲む。
  • 卵は一日1個
  • 野菜は毎食100g以上、1日300g以上。 緑黄色野菜:淡色野菜は1:2
  • おかずの半分は納豆、豆腐などの植物性蛋白。残りの半分のそのまた半分(1/4)は魚、あとの1/4を牛、ぶた、鶏肉とする。
  • 果物は減らすこと。とっても1日にりんご半目毎食個程度。
  • 炭水化物(主食)は、体重が標準体重に落ちるまで、減らしていきますが、最低毎食ご飯1膳ないしパン1枚は取る必要があります。

脂肪を燃やすには、炭水化物が必要です。また、脳細胞は、炭水化物しか利用できないからです。

食品交換表の話をする前に、カロリーの話しをしておきます。蛋白質、炭水化物は1gが4キロカロリーです。

脂質は9キロカロリーです。これは家庭科で習いましたね。ただ、体に蓄えられる脂肪は水と結合しているため、1gが7キロカロリーとなります。

悪く考えれば7000キロカロリー余分にとると1kg体重が増えます。よく考えれば7000キロカロリー消費すれば1kg減るということです。7000を30で割ると、230になります。

つまり食事で、毎日230キロカロリーうかせば、月に1kg体重が減るのです。30分の早足歩行(石神井公園・三宝寺1周―約3Km)で消費するカロリーは約150キロカロリーです。ジュース1本約80キロカロリーです。毎日ジュースを1本飲んでいる人がそれをやめて30分歩くようにすれば、月に1Kg、1年で12Kg減量できるのです。

主な食べ物のカロリーを知っておくことは必要なことです。食品交換表では、80キロカロリーが1単位になっております。なぜそうしたかお話ししましょう。

  • 卵1個が80キロカロリー
  • 80は、蛋白質、炭水化物のエネルギーである、4で割り切れる。
  • 81(約80)は脂質のエネルギーである9で割り切れる。
  • ご飯1膳が2単位、パン1切れ2単位と主食の計算がしやすい。

以上のような理由で1単位を80キロカロリーにするとつごうがよいのです。

それでは食品交換表の使い方につき、お話します。あまり難しく考えなくても良いのです。肥満の人が減量できていれば、おおよそ旨くいっていると考えてよいのです。

交換表は、表1から表6まで分かれています。

表1は主食(ご飯、ぱん、うどん等)ですが、炭水化物の含有量が多いイモはこの中に含まれます。
50gのご飯と、30gのパンがおのおの1単位です。一度計量してみてください。

表2は果物です。これは体重によらず、取っても1単位です。りんごなら、半個、ミカンなら、2個、バナナ、モモ、ブドウなら中1個程度です。
表3は、おかずです。

(蛋白質の多い食品)
魚、牛肉、豚肉はもちろんですが、蛋白質の多い大豆(納豆、豆腐)もここに含まれます。乳製品でもチーズはここに入ります。

表4は牛乳、ヨーグルトです。牛乳180mlが1.5単位です。

表5は脂肪の多い食品です。油脂と多脂性食品が含まれます。多脂性食品とは、脂質が35%以上の食品で、ベーコン、ピーナッツ、ポテトチップ、アボカド、ばら肉、揚げ煎餅、種実、バターなどが含まれます。

表6はビタミン、ミネラルを多く含む野菜、海草、きのこ類のグループです。300gが1単位です。毎食100g以上、1日300g以上摂取してください。

アルコールは、食事療法のみで,良好なコントロールがえられていない限り原則として禁止です。

1200キロカロリーの基本食をまずおぼえましょう。表1の主食は6単位です。これは毎食ご飯1膳に相当します。

表2は1単位です。これはりんご半個に相当します。
3時の間食として、食べても良いです。

表3はおかずですが、3単位です。日本人は夕食がメインになりますから、一般的には、朝1単位、昼1単位、夜1単位にすることが多いですが、朝多くしても良いのです。
朝卵1個取ると、1単位になります。魚などは、一切れ1単位のものが多いです。

表4は牛乳です。1日1本飲んでください、1.5単位になります。3時の間食としてとることもできます。

表5は脂肪ですが、1日1単位までです。

表6は1日300g以上とってください。

調味料は1日0.5単位までです。

それでは、個々の場合について、考えてみましょう。

まず自分が何カロリーでやったらよいのかが分かっていますか?分からなければ計算のやり方をもう一度復習してください。主治医の先生に聞いても良いのです。できれば80で割り切れる数のほうが良いです。

1600キロカロリーまでは、表1と表3が変わります。
1440なら、表1が、9単位になります。つまり毎食ご飯1膳半に増えます。あとは1200キロカロリーのときと全く同じです。
1600キロカロリーなら、表1が11単位ですから、朝が1膳半、昼、夜が約2膳ということになります。表3は1440キロカロリーと同じです。それ以上増えると、表3は5単位になります。表3はこれ以上増えません。あとは表1の主食を増やしていくのです。
1820キロカロリー以上では表5の脂質が、約2単位に増えます。これ以上は増えません。1820キロカロリーでは、ご飯各2膳、おかず5単位、脂質2単位となります。

食事療法は大切です。
また、栄養士が医院に常駐し、食事相談を行っています。
なかなか1回聞いたくらいでは、理解しにくいと思います。
機会があれば、積極的に参加されたらいいでしょう。

調理実習で作ったメニューです。
いつもの野菜をおいしく食べよう
おいしく食べようお魚メニュー
コンビニの惣菜を使って作る糖尿病食

(菅原医院 管理栄養士 渡邊 史子、木村 倫代)

食事療法は、長く続けられる食事をすることが大切です。
食事療法の基本を理解した上で調理を工夫し、より良い食事にしていきたいものです。
今回の調理実演を含めた講演会が、長く続けられる食事作りのヒントになればと思います。
(管理栄養士 木川眞美、富重慶子)

A.食品の特徴を理解する

ごはん、パン、めん、芋 主食 エネルギー源
果物 果糖が多いので控えめに
肉、魚、卵、大豆、大豆製品 主菜 たんぱく質源
乳製品 カルシウム、たんぱく質源
油脂 エネルギーが高いので、大さじ1杯を1日量とする
野菜 食物繊維、ビタミン、ミネラル源
砂糖、みそ、ソース等

B.食事の組み立て方

毎食、 主食(表1)+ 主菜(表3)+ 野菜(表6)になること

  • 例1.ごはん + 納豆 + 野菜のみそ汁
  • 例2.焼きそば(めん + 肉 + 野菜)
主食量 → 自分の量 最低でも、ごはん1杯は食べる。
主菜 毎食 1品を目安にする。
野菜 たっぷり食べる
生なら両手山盛り一杯。
炒めなら両手平らに一杯。
ゆでなら片手に山盛り一杯。
を目安に食べる。
塩分と油を控えて、野菜をたくさん食べるために
<1.計量スプーン(ミニ、小さじ、大さじの3本セット)>
  • 正油 小さじ1杯 = 塩1g
  • 正油 大さじ1杯 = 塩3g
  • さとう 小さじ1の甘さはみりん小さじ3(大さじ1)と同じ
  • さとう 小さじ1杯 = 3g … 12kcal
  • みりん 小さじ3杯(大さじ1杯) = 18g … 43kcal

みりんの甘さは、さとうの1/3。みりんは平気と思って、使いすぎないように

<2.減塩はだしが決め手>

化学だしはグルタミン酸ナトリウムが豊富なので、旨味はあるが、塩の効きがにぶい(塩味を感じにくい)ので、昆布をかつおでだしをとりましょう。

だしのとり方: 1リットルの水

20~30cmの昆布
かつおぶし 10g位 → お茶の煮だしパックにギュッとつめて

  • 昆布は冷水から入れて沸騰直前に取り出す。
  • かつおぶし(煮だしパックに入れたもの)をとり出す。
  • だしの色がでたら、かつおぶしを取り出す濃いだしが必要な時は、かつおぶしを長く入れておく。取り出すタイミングはお好みで。

だし汁は多めに作り、クーラーポットに入れて、冷蔵庫に入れておけば翌日まで使えます。

  • だし割正油の作り方:だしと正油を同量合わせる
  • ポン酢正油の作り方:酢と正油を同量合わせる

小さじ1杯で、塩0.5g、正油の1/2

だし割正油やポン酢はお好みで、しょうがやわさび、ねぎ、みょうが、にんにく等を加えて、バリエーションを増やしましょう。塩分は正油の1/2なのでお浸しや、ゆで野菜にかけて、おいしく野菜をたくさん食べよう。

<3.油を控えた野菜炒め>

作り方

  • フライパンに100cc位の水を入れ、少量のサラダ油を加えて火にかける。
  • 沸騰したら、野菜を入れる。 色が変わったら火を止め、水を捨てる。
  • 再び火にかけ、余分な水分を飛ばす。塩、コショウで味を調える。

少量の油でも水を使うことで、材料全体に油がまわる。短時間でやわらかく、歯ごたえのある野菜炒めができる。やわらかめがお好みな方は、ゆで時間を長くしてください。

<4.電子レンジの活用>

一人分のおひたしの作り方

  • 青菜を100g(3~4株)位洗って、ポリエチレンの袋に入れる。
  • 袋に空気穴をあける。 水を大さじ2杯位入れて口を閉じる。
  • 1分間レンジをかける。
  • 袋から取り出し、冷水に浸し、アクをとる。しぼって、食べやすい大きさに切って器にもりつける。

鍋に湯を沸かして、一人分を作るのは面倒ですね。レンジとポリエチレンの袋を使って、青菜以外の野菜も、加熱野菜にして、たっぷり食べましょう。

食事療法は続ける事がとても大切です。
食事のポイントとしてはまず次の6点になります。
あまり難しく考えないで、少し意識しながら日々の食事を摂ってみてください。

講演会より食事療法のポイント

  • バランスの良い食事をする。

    毎食 〔主食〕・〔主菜〕一品・〔副菜〕野菜を揃えるようにします。
    ご自分の食事を振り返ってみて、足りないものは足して、多いものは減らしてみてください。
    また、外食する時もお惣菜を買って来る時も上の図を頭に思い浮かべてみましょう。

  • 3食を均等に食べる。夕食の過食をしない。

    日本人は1日の終わりの食事である夕食の量が多くなりがちです。しかし、血糖のコントロール・体重のコントロールのためには三回の食事を均等に食べる事がとても大切になります。そして、3食の間隔をしっかりあけましょう。

  • 夕食後の飲食はしない。(水、お茶は飲んでください)

    夕食後の飲食は夕食の過食と同じく、血糖・体重コントロールに大きく影響します。
    そしてできれば、夕食後3時間以上空けて寝られると良いですね。もちろんその間は何も食べないようにします。仕事等でどうしても無理な場合は、生活のパターンに合わせてより良い方法をご一緒に考えていきましょう。


  • 毎食、野菜をしっかり食べる。

    右の献立では野菜を190g使っています。
    オムレツ(ピーマン20g、玉ねぎ30g、トマト25g)
    スープ煮(キャベツ100g、にんじん15g)

    右の献立では120gの野菜とひじき(戻し)40gを使っています。
    鮭のホイル焼き(しいたけ10g、にんじん10g、ほんしめじ10g)
    ひじきの煮物(ひじき戻し40g、にんじん10g)
    サラダ (グリーンアスパラガス60g、レタス20g)
    どうですか、この位の野菜は食べられそうですか?

    • 生野菜 ・・・ 両手に山盛り一杯
    • 毎食の野菜を食べる目安量 炒め物 ・・・ 両手平らに一杯
    • ゆで野菜 ・・・ 片手山盛り一杯

    このうち半分は緑黄色野菜にすると覚えてください。

  • 油料理は1日、2品にする。

    この2品が1食に重ならないようにしましょう。
    また、パンにぬるマーガリン、マヨネーズ、オイルドレッシングも数に入れてください。
    最後に、「この献立でなければならない」という献立があるわけではありません。
    上記のポイントをおさえながらも、10人いれば10通りの食事パターンがあると考えています。一度、栄養相談にいらしてください。ご一緒にあなたの食事パターンを探したいと思います。

  • 間食は1日1回以下にする。

    食べる時は日中にして、夕食から寝るまでの時間に絶対に食べないようにします。
    ③と同じですね。そして、前後の食事からそれぞれ3時間以上空けた時間に食べましょう。
    また、洋菓子より和菓子を選び、もちろん量にも注意します。(血糖コントロールが悪い時は控えるようにします)

何グラムの野菜が入っているでしょう
1.次の「なすとしめじのソテー」には何グラムの野菜を使っていると思いますか?

このソテーには「なす(1本)100g、しめじ50g」 合計150gの野菜が入っています。
この料理はソテーといいながらもサラダ油(小さじ1)をたらして電子レンジで加熱したもので、カロリーは56kcalとフライパンでソテーするより低くなっています。野菜が少ないかな?と思ったら食卓に足してみてください。

2.次にこの「野菜スープ」には野菜がどの位入っているでしょう。

このスープには「トマト100g、玉ねぎ100g、さやえんどう5g」 合計205gの野菜が入っています。
この位の量であれば食べるのも大丈夫なのではないですか?
ここに魚の切身や鶏肉を入れれば、野菜たっぷりの主菜にもなります。この位の野菜が摂れる主菜があれば、特に副菜がなくても大丈夫です。
もちろん主菜(たんぱく質源:魚、肉、卵、大豆製品)が他にあって、このスープを副菜として組み合わせても良いです。

3.では次の「卵と野菜の炒め物」どうでしょう。

この料理には「キャベツ60g、にんじん20g、ピーマン15g」 合計95gの野菜を使っています。
ここでは卵を使っているので、主菜になります。自分の好きな副菜と主食を組み合わせてみましょう。
たとえば、上記の野菜スープの1/2量と合わせてみると、これで、 197gの野菜が摂れます。
カロリーはパンにマーガリン(大さじ1/2)をぬって、362kcalになります。

どうですか?少し意識すれば、野菜も意外に量を摂れると思いませんか?
ご自分の好きな野菜からで大丈夫です。毎食、意識してしっかり野菜を食べましょう。

塩分について

「やっぱり」と思う食品から意外な食品までいろいろな食品に塩分は入っています。
一部の食品の塩分量を紹介します。「こんなにたくさん!!」と感じる食品もあると思います。
また製法、調理法などによっても数値は変わってくるという事は頭においておきましょう。

パン類、めん類
食品名 使用量(g) 1回に食べる目安量 塩分量(g)
食パン 60 6枚切り1枚 0.8
クリームパン 100 1個 0.9
肉まん 80 1個 0.7
ゆでうどん 250 1食分 0.8
干うどん・ゆで 250 1食分 1.3

肉まんよりクリームパンの方が塩分が多いなんて、びっくりしてしまいますね。
塩分の含有量は舌に感じる味に頼っていると、間違えてしまいます。

魚類
食品名 使用量(g) 1回に食べる目安量 塩分量(g)
サンマ 100 1尾 0.7
生鮭 80 1切れ 0.2
アサリ 30 10個 0.7
たこ(ゆで) 100 0.6
イカ 100 中1/2ぱい 0.8
あじの干物 60 中1枚 1.2
塩鮭 80 1切れ 1.4
ちりめんじゃこ 10 大さじ2杯 0.7
シーチキン 40 1/2缶 0.4

魚類は調理・加工する前から塩分が含まれています。
言われてみれば納得できる事ですが、意外に見落としてしまっているのではないでしょうか。
刺身(4~5切れ)もしょうゆをつけていなくても、0.1~0.2gの塩分があります。缶詰も含まれる塩分量を考えて味付けしましょう。

練り製品・乳製品
食品名 使用量(g) 1回に食べる目安量 塩分量(g)
かまぼこ 40 2切れ 1.0
はんぺん 50 1/2枚 0.8
ハム(ボンレス) 40 2枚 1.1
ウインナー 30 2本 0.6
プロセスチーズ 25 1個(6Pチーズ) 0.7
バター・マーガリン 6 大さじ1/2 約0.1

練り製品は塩分がとても多く含まれています。
さらに、かまぼこや竹輪などしょうゆをつけて食べる方もいらっしゃるのではないでしょうか。減塩を考える時、練り製品を食べる回数・量をぐっと減らして欲しいと思います。

漬物・梅干・佃煮
食品名 使用量(g) 1回に食べる目安量 塩分量(g)
梅干 10 1個 2.2
たくあん 30 3切れ 1.2
べったら漬 30 3切れ 0.9
きゅうり ぬかみそ漬け 30 薄め5切れ 1.6
白菜キムチ 30 0.7
のり佃煮 15 約大さじ1 0.9

製品により塩分の含有量は違ってきますが、塩分は多い事には変わりないので気をつけます。
食べる回数・量共に減らし、できれば普段は食べないようにするなど決めると良いでしょう。

菓子類
食品名 使用量(g) 1回に食べる目安量 塩分量(g)
ポテトチップ 25 1/4袋 0.3
せんべい 20 1枚 0.5
どら焼き 60 1個 0.2

菓子類にも塩分は含まれています。食事から摂る塩分だけでなく、間食でも意識してください。

調味料
食品名 使用量(g) 1回に食べる目安量 塩分量(g)
しょうゆ 18 大さじ1 2.6
薄口しょうゆ 18 大さじ1 2.9
みそ 18 大さじ1 約2.0
ウスターソース 18 大さじ1 1.5
トマトケチャップ 15 大さじ1 0.5
豆板醤 20 大さじ1 3.3
焼肉のたれ 18 大さじ1 約1.0
カレーのルー 20 1皿分(1かけ) 約2.0
ふりかけ 2.5 小さじ1 0.3

カレーの調理にてさらにソース・塩を使用した場合、さらに塩分量が多くなります。
気をつけてください。また、塩分量が気になるときは貝類やイカなど塩分を含んだ具を避けるとよいでしょう。

だし類
食品名 使用量(g) 1回に食べる目安量 塩分量(g)
固形コンソメ 2.7 1/2個 1.2
顆粒風味調味料 1 小さじ1/4 0.4
天然だし(かつお・昆布) 150ml お椀1杯 約0.2
インスタント食品
食品名 使用量(g) 1回に食べる目安量 塩分量(g)
インスタントラーメン 100 1袋 5.9(スープ4.1)
カップラーメン 76 1個 4.8(スープ2.5)
レトルトカレー 210 1袋 2.3
冷凍エビピラフ 250 1食 2.8
ミートソース(缶詰) 150 1食 2.8

惣菜をふくめて調理済みの食品は、家庭で調理する料理に比べて味が濃く塩分量が多くなります。
(しかし、家庭で特別濃い味付けをする場合は除きます)組み合わせる他の料理の塩分量を減らす・なくすなど、工夫しましょう。

糖尿病の運動療法

糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法です。運動により、単にエネルギーを消費するだけでなく、筋肉の糖の取り込みが良くなります。30分程度のウォーキングでも、毎日行えば40%も増加します。 しかもこの効果は運動中だけではなく運動後も長時間にわたり持続します。40歳以後、同じ食事をしていても太るのはなぜでしょうか。これは何もしなくても消費するエネルギー(基礎代謝)が減少するためです。

それではどこで消費されるのでしょうか?答えは筋肉なのです。筋肉で全体の40%が使われます。中年以後太る原因は筋肉の量が減り基礎代謝が落ちるためなのです。歩くことにより筋肉量も増加します。
要するに運動するということは糖の消費の良い体に改造するということなのです。食事療法のみの場合、はじめは体重が減ってもそのうちとまってしまうことがあります。これは、余りエネルギーが入ってこないために、低エネルギーで生きていける体になってしまうためです。
つまり基礎代謝が落ちてしまうのです。この場合、運動療法を併用すれば、また基礎代謝が増加し、体重が減ってきます。

脂肪は1gが9キロカロリーというのは家庭科で習ったと思います。身体についている脂肪は水と一緒になっていますので、1gは7キロカロリーです。つまり7000カロリー使うと体重は1キロ減ることになります。
運動でどのくらいエネルギーを消費するかというと、体重60キロの人が時速6キロで歩いたとき、30分で約180キロカロリー(80キロの人なら240キロカロリー)位です。これはかなり速いスピードですので、通常の速歩だと150~200キロカロリーと覚えておきましょう。
これくらいの運動でも毎日続ければ、1ヶ月で5000キロカロリー位にはなりますから1キロ弱体重が減ることになります。実際は基礎代謝の増加も加味されますからもっと減ります。
食事療法で200キロカロリー減らすと1ヶ月で約1キロ減ります。運動療法と併用すれば、月2キロの体重減少は十分可能です。げんに、私の患者さんで、半年で10キロ減らした人は大勢います。

運動はいろいろありますが、糖尿病や減量によいのは有酸素運動です。これはウォーキングやジョギング、遠泳、登山などの運動です。息切れしないで15分以上できる運動です。
心拍数でいうと、1分間に110~120位、高齢者ではこれよりやや遅め、若年ではやや速めでもよいでしょう。話はできるが歌は歌えない程度の運動です。運動直後、心拍数は急激に落ちていきますので、1分間測定すると少なめになります。
15秒間計って4倍して10足してください。運動は最低1回15分以上、1日30分以上やる必要があります。週2回と3回では運動効果がかなり違います。週5回以上では余り差がありません。ですから週3回から5回やるのがよいのです。ただカロリーは多いほど増えますから、減量目的の場合は毎日でもよいのです。
運動による消費カロリーは1週間に700~2000キロカロリーが推奨されています。誰でもできる運動として、速歩が勧められます。膝関節痛などのために歩けない人は、プールの中で歩くとよいでしょう。浮力のため体重が5~10キロ位になり、関節の負担が減ります。また、エアロバイク(室内自転車こぎ)も膝に負担が少ないとされています。梅雨時など雨で運動がしにくいと思いますが、1日中降ることは実際は少なく、その気になればできるものです。

筋力増強運動(バーベル挙げ、ブルワーカー等)は以前はむしろやらないほうがよいとされていましたが、息を止めなければ比較的安全に施行でき、筋肉が増えれば、基礎代謝が増加し消費エネルギーが増えるという考えから、最近では有酸素運動との併用が推奨されています。
繰り返しますが、危険ですので息こらえはしないでください。運動はたいていの場合は勧められますが、禁忌の場合もあります。増殖性網膜症の急性増悪期、急性心筋梗塞発作直後などはやってはいけません。
主治医の先生とよく相談してから始めてください。

筋肉をつけるエクササイズ
腰痛のストレッチ 腰痛のある場合

虚血性心疾患の話

高齢者糖尿病の死因の約30%(全体では約18%)が虚血性心疾患で、糖尿病の患者さんにとっては非常に重要な問題です。
これは動脈硬化に基づくものです。糖尿病患者さんの寿命は平均で男性で10年、女性で15年短い(コントロールのよい患者さんは、むしろ一般人よりも寿命は長い)ですが、その原因は動脈硬化が10年以上早く進むためです。高血糖そのものが、動脈硬化を進めますが、糖尿病患者さんの場合は、高脂血症(コレステロール・中性脂肪が高い、HDL-コレステロールが低い)、肥満、高血圧、高尿酸血症などが合併していることが多くさらに動脈硬化を進めます。
最近分かってきたことですが、境界型糖尿病でも動脈硬化が糖尿病と同じように進みます。特に肥満があると、脂肪組織のなかからインスリン(血糖を下げるホルモン)を効きにくくする物質がでるためインスリンの効きが悪くなり(「インスリン抵抗性」といいます)、むしろインスリンが過剰分泌になっていることが多いのです。
糖尿病の患者さんで、他に動脈硬化を進展させる要因のある場合は厳重に管理する必要があります。コレステロールの基準値は220以下ですが、糖尿病の場合200以下にしておく必要があります。さらに狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患がある場合は、180以下にしなくてはいけません。中性脂肪も通常は150以下ですが、糖尿病の場合は130以下にしたほうがよいのです。

近年、冠状動脈形成術(心臓の血管の中にカテーテルを入れて、狭くなっているところを風船(バルーン)で膨らませて広げる術式-PTCAという)が心臓専門医の間で施行されていますが、糖尿病患者さんの割合が年々増えています。30%以上が糖尿病という施設も多いようです。
術後再狭窄が起こることがありますが、最近では、金属の円筒形の網(ステント)を血管の中に残すことで、再狭窄を減らしています。大学病院などではPTCAを施行される患者さんの約30~50%にステントが使用されています。
以前はPTCAを行う前に血栓溶解術(PTCR)が施行されていましたが、先にPTCRを施行すると再狭窄率が高まったり、血栓が溶けた直後に重度の不整脈が出現することがあり、初めからPTCAが行われることが一般的になっています。

PTCAは発作後できれば1時間以内、遅くとも3時間以内に施行する必要があります。順天堂病院では、4チーム交代のオンコール体制をとっています。心筋梗塞を起こしたらまず電話で行くことを通知してから救急車でいってください。

心筋梗塞は命にかかわる病気です。起こさないためには、まず血糖のコントロールをよくすること。そして、他の動脈硬化の促進因子(高脂血症、喫煙、高尿酸血症、高血圧、肥満、運動不足、ストレス等)を無くすことが大事です。

糖尿病性網膜症の話

糖尿病と言われた時に眼科を受診する患者さんは3割程度にすぎず、2年以上経過してからの受診が5割もあると言われています。
眼科の初診時期が糖尿病の診断時期より7年遅いという報告もあります。目の自覚症状がない場合は眼科受診しないことが多いのですが、糖尿病の診断がついてから、眼科を初診するまでの期間がその後の網膜症の重症度と密接な関連があります。糖尿病で目が悪くなることや、血糖コントロールが悪いと網膜症が進展することを知らない患者さんも決して少なくありません(約20%)
最初に糖尿病を指摘した医療関係者が早期に眼科受診を指示することが重要です。眼科初診時、網膜症は20-45%程度に認められます。また眼科で発見される糖尿病は15%程度あり{視力の低下を感じて受診しはじめて糖尿病と診断された方は8%}、重症例が多いのです。1回も健診を受診したことがないという区民がいなくなるようにしていく必要があります。

健診で撮影する眼底写真は通常無散瞳で行いますが、全体のごく一部の中心部分しかみれません。糖尿病の網膜症は中心部ではなく周辺部から始まることが多いので、この検査では見逃される危険性があります。糖尿病を指摘されたら、専門の眼科医を受診し散瞳して隅の方まで診てもらって下さい。
まず小さい血管がつまり毛細血管瘤ができ、そこが破れて網膜に出血を起こしてきます。出血や浮腫が吸収された後に境界鮮明な硬性白斑ができることもあります。この時期を単純性網膜症といいます。網膜の毛細血管の閉塞がさらに進行すると、眼底写真で境界不鮮明な軟性白斑が生じます。この部位は血管が詰まって末梢の血流が全く流れなくなった部分に相当します。この周囲には異常血管がみられます。
蛍光眼底検査を行えば血管が詰まって、その先に血液が流れていかない状態がわかります。糖尿病の患者さんには必須の検査といえます。この時期は通常症状はでませんが、黄斑部という、実際ものを見ている部位に出血すると、かすんだりします。血流の流れていない部位には新生血管が発生してきます。この血管は非常に脆く出血を繰り返します。新生血管は網膜と硝子体(しょうしたい)の間を伸びていくので、網膜前出血や硝子体出血を起こします。新生血管は増殖組織を伴って発育していきます。

この時期を増殖性網膜症といいます。視力低下が出現します。分かりやすくするため、卵で例えると殻の裏についている膜が網膜、白身が硝子体ということになります。この膜状の増殖組織が網膜を引っ張ることにより網膜を剥がしてしまうのです(網膜剥離)。
網膜が完全に剥がれると失明します。新生血管が前房隅角に出現すると,房水を排出できなくなり、眼圧が上がり、緑内障を起こします。新生血管が増殖する前(増殖性前網膜症の時期)にレーザを当て新生血管ができる場所をなくしてしまうことが重要です(光凝固療法)。
レーザーは1回200発ずつ計600発くらい行います。1発が直径0.2mmくらいです。レーザーを当てても視力は落ちませんが視界はやや暗くなります。
高齢者が,目の中にゴミがいっぱい飛んでいると訴える時は、たいてい硝子体剥離です。これは網膜が剥がれるのではなく、硝子体が網膜から剥がれるのです。近視の人は眼軸が長いので引っ張られ易く、より若い年齢で硝子体剥離を起こします。硝子体剥離を起こすと新生血管が発育できなくなりますし、硝子体出血する場所もなくなりますので,網膜症の進展は止まります。

糖尿病性網膜症の患者さんにとっては、硝子体剥離は早く起きた方がよいのです。増殖性網膜症の治療は、人工的に硝子体剥離の状態を作ることです。手術をして,硝子体を吸引してしまうのです。網膜をいっしょに剥がしてしまうと失明する危険もありますが、最近は手術の成功率が大幅に上がっています。
比較的早い時期に行ったほうがよい結果が得られています。
網膜症の頻度は糖尿病発症5年で20%、10年で50%、20年で75%といわれています。
10年未満では単純性が15%、前増殖性、増殖性が各5%以下。10-20年では単純性が30%、増殖性と前増殖性が各15%程度。20年以上になると単純性が35%、前増殖性が20%、増殖性が30%と増えます。

黄斑浮腫の頻度は単純性で65%、前増殖性で90%、増殖性で100%。黄斑浮腫により、視力が0.5以下になるのは単純性で7%、前増殖性で20%、増殖性で50%。
軽度の前増殖性網膜症から増殖性網膜症への移行は20%、重度の場合は80%程度移行します。
網膜症を進展させないためにはなによりも血糖のコントロールをよくすることです。インスリン治療の場合、HbA1cを9%から7%にすると9年後の網膜症の発症が55%から13%に、進展が54%から28%に低下します。経口薬でも同様の報告がなされています。
網膜症の予防のためにHbA1cを是非6.5%以下にして下さい。

既に網膜症が進展している時期に急激に血糖を低下させると網膜症が悪化するといわれています。しかし高いままにしておく方がはるかに悪いのです。コントロール開始3週間後の空腹時血糖が160mg/dl程度であれば良い思います。コントロールをしてもしばらくの間は網膜症は悪化します。いままでの悪かったつけがでているのです。10ヶ月程度良好なコントロールが続くと、通常網膜症も落ちついてきます。

糖尿病性網膜症

硝子体出血→レーザー治療後

糖尿病性神経障害の話

足の裏がじんじんする。足の裏に紙が張り付いた感じがする。海水浴で熱い砂浜を歩いても熱く感じなかった等の症状で始まることが多いのですが、こむら返りもよく見られる症状です。その後、足先のしびれ、痛みを経て冷感、ほてりと進みます。
もっと進行するといつも砂利の上を歩いているような感じになります。指先のしびれが出ることもありますが、必ず足から始まります。通常左右対称におきます。手のみの場合は頚椎症や手根管症候群、肘部管症候群を疑います。
頚椎症の場合は通常、首の痛みを伴います。手根管症候群は手首の場所で正中神経が圧迫されて起きますが、糖尿病で起こることもあります。親指、人差し指、中指全部と薬指の親指側半分のしびれが起こります。手首の手掌側を叩くと指先に痛みが放散します。通常中指から始まり、小指に症状はでません。親指から始まる場合は頚椎症を考えます。小指と薬指の半分がしびれる時は肘部管症候群を疑います。
これは肘のところで尺骨神経が圧迫されて出現します。

こむら返りには入浴後のヒフク筋(アキレス腱の付いている筋肉)のストレッチ運動が効果があります。タウリンも効きます。眠前に筋弛緩剤や安定剤を投与することもあります。
消化器症状も良く見られる症状です。食道の蠕動運動が低下すると嚥下障害が,食道下部の締りが悪くなると胃液の逆流による食道炎がおこります。胃の動きが悪くなると痛みやもたれが出現します。食物の吸収も悪くなり、血糖のコントロールが難しくなります。腸の動きが悪くなると便秘になることが多いのですが,逆に下痢することもあります。便秘,下痢を繰り返すのは神経障害による消化器症状の特徴です。

自律神経障害により立ちくらみが起こることもあります。歩行や水泳などの運動療法が効果があります。腕を振ったりしてから起きあがるといいようです。
足裏の感覚がなくなると傷ができても気がつかず、化膿し壊疽になることもあります。日本人は帰宅すると靴を脱ぐし,毎日入浴したり、欧米人に比し清潔なため下肢の切断まで至る例は少ないのですが、今後増加することが予想されています。感覚が無くなってきたらよく足を見るようにして下さい。

糖尿病性腎症の話

尿に常に蛋白が出ている糖尿病性腎症患者数は約80万人と言われています。
日本の透析患者数は約20万人で、毎年約3万人が新規に導入されていますが、98年には糖尿病性腎症は慢性糸球体腎炎を抜き新規導入の約35%と第1位になりました。
糖尿病性腎症が他の腎疾患と異なるのは、透析に移行してからの平均余命が5年未満と極めて短いことです。その理由として糖尿病のコントロールが悪かったために動脈硬化が進んでいて心筋梗塞、脳梗塞などを併発したり、心不全や感染症等にも罹患しやすいこと等が挙げられます。最近、腎症の進展と心臓の血管の動脈硬化が同様の機序により起こることが分かってきました。腎症があるということは血管の動脈硬化の存在を示しているといえます。腎症は遺伝も関係しコントロールが悪くても腎症を発症しない人もいるので、腎症がないからといって動脈硬化がないとはいえません。動脈硬化は境界型の人でも進みます。血糖が高ければ,それ相当の動脈硬化が進んでいると考えて下さい。

糖尿病性腎症を防ぐにはまず血糖のコントロールをよくすることです。HbA1cをずっと6.5%以内に保てば腎症を発症する危険性は極めて低くなります。
腎症を早期に発見することも大事です。以前は尿に蛋白が出る(第3期)まで分からなかったのですが、この時期に分かっても既に遅いのです。通常の検査で常に蛋白が出始めるといくらコントロールを良くしても腎症の悪化を防ぐことが困難になります。球が坂道を転がり始めた状態と考えて下さい。
蛋白尿が出てから透析に移行するまでの年数は血糖のコントロール、塩分制限、蛋白制限、血圧コントロールをどこまでできたかによって異なってきますが通常止めることはできません。それではどうやって早期に発見したらよいのでしょうか?

皆さん、尿中微量アルブミンという言葉を聞いたことがありますか。これが出始めた状態が早期腎症(第2期)でこの時期に血糖コントロールをきちんとすれば腎症が悪化しないで元に戻るとされています。第1期(腎症前期,微量アルブミンも出ていない時期のこと)では年1~2回、第2期では数ヶ月に1回程度測定する必要があります。
微量アルブミン尿は24時間蓄尿した場合は15μg/分以上が陽性です。昼間の随時尿では20μ/分以上、夜間尿では10μ/分以上が陽性となります。随時尿の場合、クレアチニンで補正する方法が正確にでます。尿中アルブミン/尿中クレアチニンが30mg/gCr以上なら陽性です。
これが300を超えると蛋白尿が陽性にでます。定量以外に定性検査もあります。これはスティックを尿につけるだけで瞬時に判定できます。第1期では定性検査でもよいと思います。第2期では定量して、増加していないか見ていく必要があります。過度の運動をするとアルブミン排出が増えますので検査の24時間前から過度の運動はしないで下さい。

蛋白尿が糖尿病以外の原因で出ている患者さんもおられます。通常腎症は糖尿病罹患後5年以上たってから起こります。また,網膜症,神経障害がなく腎症のみ進むことも稀です。血尿や細胞性円柱も通常出ません。したがって5年未満で発症したり、円柱が出ている場合は他の原因を考えてみる必要があります。
既に尿に蛋白が出てしまっている場合は以下の点を守って下さい。
まず血圧のコントロールをしっかりやって下さい。130/85未満にします。蛋白尿が1g以上出ている場合は125/75未満にして下さい。平均血圧を154/87mmHgから144/82mmHgに下げると腎症の発症は37%減少することが分かっています。
腎臓の輸出細動脈を拡げ腎保護作用のあるAcE阻害薬の使用が推奨されています。咳が高頻度で出るので、その場合はブロプレス、ニューロタン、デュオパン等の受容体拮抗薬がよいでしょう。クレアチニンが2以上になったら腎障害をかえって進めることもあるので他の降圧薬に変えます。

塩分もできれば1日7g以下にします。蛋白質も制限します。第2期では体重1kgあたり1.0から1.2g,第3期では0.8から1.0gに制限します。血清クレアチニンの上昇した第4期に入ったら0.6から0.8gの低蛋白食にしましょう。
透析に移行したらもはや腎臓の機能はなくなるので、1.2g程度に増やします。蛋白を減らした分は糖質を主体に増やします。高脂血症がなければ脂質を幾分増やしてもいいでしょう。運動は第3期以降では過度な運動は避けた方が良いでしょう。塩分,蛋白制限食はおいしくなく継続して続けるのは難しいかと思いますが、やっただけの効果は必ずあります。 腎症のある患者さんは,脱水や消炎鎮痛剤,造影剤、抗生物質の使用等により増悪することがあります。腎臓排泄される薬の使用には特に注意が必要です。他科受診される場合は糖尿病性腎症があることを必ず話して下さい。

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